2月3日の節分には豆まきをして歳の数だけ豆を食べますし、恵方巻きを食べるという人も最近では結構増えてきたかもしれませんね。
それともう一つ、いわしを食べたり飾ったりするという風習もあります。
節分にいわしを食べる意味、飾る理由って何なのでしょうか?
どこの地域でやってる風習? 食べ方に決まりはあるの?
ここでは、そんな疑問に迫ります!
節分にいわしを食べる意味 飾る理由って何?
まず、節分にいわしを飾ったりする風習を知らない人のために、どんなものなのか解説します。
それを軒先か玄関に飾る。
西日本では、やきさし、やいくさし、やっかがし、やいかがし(焼嗅)とも言う。
でも、どうして節分にいわしを飾るんでしょうね? どういう意味があるのでしょうか。
節分にいわしを飾る意味
塩鰯を焼いた時に出る生ぐさい臭いが鬼を寄せ付けず、柊の葉っぱのトゲが鬼の目を刺すとされるためです。
鬼は、柊の葉っぱで目を突いて痛い思いをしたことがあって、それ以来、柊が苦手になったという言い伝えがあります。
では、鬼はいわしの臭いが苦手だからという理由はどこから出てきたのでしょうか?
屈強な怪物である鬼が、生臭いとはいえ、いわし程度の臭いを恐れて近寄らないというのも、よくよく考えるとおかしな話ですよね。
鬼を臭いで撃退するなら、シュールストレミングくらいじゃないと。
それでは住人自身も大変ですけどね(笑)
(※シュールストレミングとは、主にスウェーデンで作られている塩漬けのニシンの缶詰。世界一臭い食べ物と言われています。)
それはさておき、鬼がいわしの臭いを嫌う由来を探ってみたら、面白い話が見つかりましたよ!
この風習、元々平安時代には、ボラの頭を柊の枝に挿して、それをしめ縄に挿して飾っていたのだそうです。
昔は、いわしじゃなくてボラだったんですね。
なぜ、ボラだったったのでしょうか?
ボラというのは漢字で「鰡」と書きます。
魚偏に留めると書いて鰡ですから、神様を家に留めることができると考えてボラを飾っていたのだそうですよ。
しめ縄自体も、神様を家に呼んで留まってもらうためのものです。
元々は、鬼を寄せ付けないためではなく、神様に長くとどまってもらうための風習だったんです。
当時は、「鬼は外」のためではなく、「福は内」のためにやっていたんですね。
それがなぜイワシになったのか?
その背景には、武士の台頭がありました。
元々「鬼」というのは、陰陽道で言う「陰(おん)」という考えから来た概念で、厄災や疫病、飢饉のような悪い事象を表していました。
それが室町時代になると、「鬼」は、恐ろしい人を表す言葉としても使われるようになります。
平安時代の終わりから室町時代にかけての時代には、貴族の権力が衰えて武士が台頭してきましたよね。
武士というと、武士道精神を持つ高潔な武人というイメージが強いですが、乱世には傭兵くずれの野盗のような者がゴロゴロいました。
彼らはまさに、「悪い出来事=鬼」のような存在だったのです。
それが、「鬼」という言葉に「恐ろしい人」という意味も加わった原因ではないかとも言われています。
室町時代の人も、仏教でいう地獄の鬼という存在は知っていました。
その地獄の鬼のイメージが、現実に存在する恐ろしい野盗・野武士と結びつき、庶民の間では、節分でも神様を呼んで長くとどまってもらうよりも、鬼を寄せ付けないようにしたいという思いが強くなったのです。
その結果、節分にはボラではなく、いわしが飾られるようになりました。
いわしって、漢字にすると魚偏に弱いで「鰯」と書きますよね。
強い鬼が鰯の臭いをまとうと力が弱まってしまうので、近寄ってこないと考えられたわけです。
鬼がいわしを嫌うのは、「弱」という字が使われている鰯(いわし)の臭いで力が弱まってしまうから。
納得のいく理由ですね。
節分でそのいわしを食べる意味って何?
鬼が臭いを嗅ぐと弱体化してしまうのに、私たちがそのいわしを食べるのってどういう意味があるんでしょうね。
これにはいくつか説があります。
一つは、弱くて臭いいわしを食べることで、陰の気を消してしまう意味があるという説。
もう一つは、いわしは特に傷みやすいので弱さや病気を象徴する魚とされたことから、その弱さや病を食べてしまうことで一年の健康を願ったという説。
なるほど、こちらの由来も納得です。
節分のいわしはいつまで飾るの?
節分のいわしは、いつからいつまで飾っておくかについては、地域によってかなり違いがあるようです。
1月15日(小正月)~2月3日(節分)
1月15日(小正月)~3月3日(ひな祭り)
2月3日(節分)だけ
2月3日(節分)から翌年の節分まで1年中
節分にいわしを食べる地域 飾る地域はどの辺?
節分にいわしの頭を飾ったり食べたりするのは、西日本を中心に行われている行事です。
関西の中でも、特に奈良県で広く行われているようですね。
私は千葉県出身なので、この風習はテレビなどで聞いたことはありましたが、やったことも、実際に見たこともありません。
・西日本:広島、岡山
・中部・東海・関東:岐阜、愛知、静岡、栃木
・東北:福島、青森
(同じ県内でも、地域によって違いがあるようです)
関西から遠く離れた東北地方などでも、節分にいわしを使っているというのは意外ですね。
でも、例えば福島県には、節分のイワシにまつわる「鬼っこ人っこ」という昔話があるんですよ。
やがて、その女性と鬼の間に「できぼし」という名の鬼の男の子が生まれた。
ある日、その女性の父親であるおじいさんが、娘に会うために鬼の家を訪ね、鬼の家に一晩泊まることに。
鬼はおじいさんを食べてしまいたくて仕方なくて、皆が寝静まった後に長い舌をおじいさんの方に伸ばすが、そのたびにできぼしがポカリと鬼を叩いておじいさんを守った。
翌日、おじいさんと娘とできぼしは、こっそり里に逃げることにした。
できぼしは鬼の家の中にいくつもウンコをして、自分の代わりに返事をするように言いつけた。
しかし、3人が逃げ出したことに鬼が気づき、追いかけてきてしまう。
3人はいかだで川を下っていたが、鬼は川の水を全て飲みつくしてしまい、いかだは止まってしまった。
腹の中を水でいっぱいにしながら追いかけてくる鬼に向かって、できぼしはお尻をペンペンして笑わせ、鬼は飲んだ水を全て吐き出し、3人はいかだで逃げおおせる事ができた。
それからしばらくたち、節分の日の夜、鬼ができぼしを探しにおじいさんたちの家にやってきた。
しかし、家の軒には、やいかがし(焼いたいわしの頭)が刺してある。
それを見た鬼は、できぼしが焼かれてしまったと思い込み、怖くなって山へと逃げていった。
安心したおじいさんができぼしの頭を撫でると、できぼしの頭に生えていた角がポロリと取れた。
できぼしはそれから、人間の子として幸せに暮らしたとさ。
めでたし、めでたし。
似たような話は、宮城県にもあるそうですよ。
節分いわしの食べ方は?
食べることで弱さや病をやっつけてしまい、一年の健康を願うという意味もある節分のいわし。
食べ方に決まりはあるのでしょうか?
塩焼きにして食べるのが一般的ですが、絶対にそういう食べ方をしないといけないというわけではないようです。
調べてみても、節分いわしのいろんなレシピが見つかりますね。
つみれ汁や生姜煮だけではなく、イワシのマリネやイワシのミルフィーユなどの現代風の料理まで。
節分にいわしを飾る習慣のない地域に住んでいても、行事食としていわしを食べるというのも楽しそうですね。
まとめ
以上、節分にいわしを飾る意味や、いわしを食べる理由などについて紹介しました。
いわしの頭を飾るのは、鬼が生臭いいわしの臭いを嫌うから。
いわしの頭を柊に刺すのは、柊の葉のトゲが鬼の目を刺すので、鬼は柊が苦手だから。
関西を中心に行われている風習で、関東などでは馴染みがないのですが、ちょっと楽しそうですね。
最近では、人間にも臭いが嫌われて、いわしの頭を玄関などに飾る家は減っているそうですが、節分にいわしを食べるというのはできますよね。
豆を歳の数だけ食べるのはちょっと食い足りないですから、節分の日には、夕食のメニューをイワシにしてみるのも良さそうです。