主に、冬の終わりから春の初めの時期にかけて美しい花を咲かせる椿。
椿って、どんな花言葉を持っているのでしょうか?
椿の花言葉は、日本とはずいぶん違うものがヨーロッパにもあって、そちらには、裏の花言葉とも呼ばれる、ちょっと怖い響きのものもあるんですよ。
その由来は、はかなくも美しい、ある一人の女性の悲恋の物語でした。
ここでは、椿の花言葉を、椿にまつわるそんなお話などとともに紹介しますね。
椿の花言葉を色別に紹介!
椿には色ごとに違った花言葉もありますが、色に関係なく、椿全般につけられた花言葉もあります。
それは、「控えめな優しさ」「誇り」です。
椿の花言葉には、色別でも「控えめな」などの奥ゆかしい言葉がつく物が多いのですが、これは、椿には香りがないことに由来します。
それでは、色別の椿の花言葉も見てみましょう。
赤い椿の花言葉
「控えめな素晴らしさ」
「謙虚な気持ち」
「気取らない優美さ」
白い椿の花言葉
「完全なる美しさ」
「至上の愛らしさ」
「申し分のない魅力」
ピンクの椿の花言葉
「控えめな美」
「控えめな愛」
「慎み深い」
黒椿の花言葉
「気取らない優美さ」
どの花言葉も、謙虚な中にも優美さと魅力、そして気品を感じさせる物ですが、これは日本での花言葉。
実は、海外では、これとは別の花言葉があるんですよ。
春に花を咲かせることから、この漢字が作られました。
椿のことを中国語では、「茶花」「山花」といいます。
椿の花言葉 ヨーロッパでは?
椿って、実は日本や中国が原産の植物で、日本では万葉の時代から愛されてきた花ですが、西洋に伝わったのは18世紀に入ってから。
ヨーロッパでは、椿は「日本のバラ」とも呼ばれて人気を集めたといいます。
椿の学名も「Camellia Japonika(カメリア ジャポニカ)」という、日本にちなんだものなんですよ。
そんな椿に、ヨーロッパではどんな花言葉がつけられたのでしょうか。
まず、こちらが色には関係なく、椿全体につけられた花言葉です。
「敬愛、感嘆(admiration)」
「完全、完璧(perfection)」
(日本での花言葉は、「控えめな優しさ」「誇り」です)
西洋にも、花の色別につけられた、椿の花言葉があるんですよ。
ヨーロッパでの赤い椿の花言葉
「あなたは私の胸の中で炎のように輝く(You’re a flame in my heart)」
(日本での花言葉は「控えめな素晴らしさ」「謙虚な気持ち」「気取らない優美さ」です)
ヨーロッパでの白い椿の花言葉
「愛慕、崇拝(adoration)」
「愛らしい(loveliness)」
(日本での花言葉は「完全なる美しさ」「至上の愛らしさ」「申し分のない魅力」です)
ヨーロッパでのピンクの椿の花言葉
「恋しく思う(longing)」
(日本での花言葉は「控えめな美」「控えめな愛」「慎み深い」です)
西洋での椿の花言葉には、日本のような奥ゆかしさ、謙虚さとは異なり、外国らしい情熱的な物もあるんですね。
ヨーロッパにおいて椿は、長崎出島に滞在したエンゲルベルト・ケンペルというオランダ商館員によって、17世紀に初めて紹介されて知られるようになりました。
その後18世紀に、イエズス会の宣教師で植物学者でもあったゲオルク・ヨーゼフ・カメルという人物によって、フィリピンで入手した種が持ち込まれ、椿はヨーロッパでも栽培されるようになったのです。
椿のことを英語でcamellia(カメリア)というのは、西洋に初めて椿の種をもたらしたカメルの名が由来になっています。
椿は、パリにある王宮の温室でも栽培されました。
ナポレオンの皇后ジョセフィーヌも椿を愛し、衣装にも椿をあしらったことから、上流階級の婦人たちの間に椿ブームが起こったといいます。
皇后ジョセフィーヌが衣装に椿をあしらったことは、貴婦人の間の椿ブームだけではなく、ある小説が生まれるきっかけにもなりました。
でもそれが、ちょっと怖い、椿の裏の花言葉の由来にもなるんです。
(詳しくは次の章で・・・)
椿には怖い裏花言葉もある!?
ナポレオンの皇后ジョセフィーヌが椿を愛し、衣装にもあしらったこともきっかけとなって生まれた小説は、1848年にアレクサンドル・デュマ・フィスによって書かれた「椿姫」です。
椿姫は、オペラや映画にもなっていますね。
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椿のちょっと怖い裏の花言葉というのは
「罪を犯す女」
普通の椿の花言葉の、控えめさや優美さ、情熱とは打って変わってなんだか不穏ですが、一体どういうことなのか、椿姫のあらすじから探ってみましょう。
椿姫のあらすじを簡単 簡潔に紹介します
そんな中で、とびきりの美しさの持ち主だったのが、マルグリット・ゴーチェという女性。
彼女は、常に椿を身に着けていることから、人々から「椿姫」の異名で呼ばれていました。
彼女は特に金遣いの荒い女として有名でしたが、実は、彼女は肺をわずらっており、自分の命がもう長くはないことを自身でもよく知っていたのでした。
彼女はなぜ椿を身につけていたのか。それは、椿には香りがないため、肺の病にさわらないからです。
マルグリットは、男と嘘と金銭トラブルにまみれ、堕落した、罪深い人生の惨めな末路を意識しつつも、心の救いは得られず、派手な生活の中でその不安をごまかし、病状を日々悪化させていきます。
そんな中で出会ったのが、アルマン・デュヴァールという青年。
彼はマルグリットの体のことを気遣い、彼女に愛の告白をしたのでした。
マルグリットは、アルマンの純粋な愛に心を動かされ、商売抜きで彼と付き合うようになります。
そして、娼婦をやめてパリを離れ、郊外でアルマンとともに、慎ましくも満たされた生活を始めたのでした。
しかし、そんな2人の関係を快く思わない人物がいました。
アルマン青年の父親です。
父親はマルグリットの元を訪ね、「あなたが本当に改心し、2人の愛が本物だとしても、一度道を踏み外したあなたを世間はどう思うだろうか。私の息子を本当に愛しているのならば、息子のために別れて欲しい」と告げます。
マルグリットは悩み、苦しみましたが、愛するアルマンのためを思い、身を引く決心をします。
マルグリットはパリに戻り、元の高級娼婦となって、また自堕落な生活を始めたのでした。
事情を何も知らされていないアルマンは、マルグリットに裏切られたと思い、彼女を責めつつ、傷心のまま外国へと旅立っていきました。
アルマンを失ったマルグリットは、日々病状を悪化させていき、ついには死の床につきます。
それまでの派手な生活とは打って変わって、世間からは忘れ去られてしまいましたが、それでも彼女の心には、アルマンへの愛という希望が残されていました。
マルグリットは、アルマンが別れの本当の理由を知ってくれることを願って、別れるに至った事情を手記に記し、自分の死後それをアルマンに渡してくれるよう、友人に託したのでした。
アルマンは、別れの裏にあった自分への彼女の愛を知り、同時に、彼女が既に危篤状態にあることを知って、急いでパリへと戻りました。
しかし、時すでに遅く、アルマンが駆けつけたときには、マルグリットは天に召されていました。
マルグリットは、アルマンへの愛を抱きながら、孤独のうちにその短い生涯を終えたのでした。
椿の裏の花言葉「罪を犯す女」の罪とは、アルマンと出会う前の堕落した人生のことを指すのか、それとも、アルマンと別れるために、彼を傷つけるような真似をしてしまったことを指すのか・・・。
花言葉だけを見るとちょっと怖いですけど、由来を知ると切ない話ですね。
ちなみに「椿姫」は、この小説を書いたデュマの実体験が元になっているといいます。
マルグリットのモデルになった高級娼婦は、マリ・デュプレシスという女性で、その女性は結核で亡くなっています。
椿には怖い伝承 昔話もたくさんある!
椿の裏花言葉の由来になった椿姫のお話は、怖いというよりは切ないストーリーですけど、本場日本には、椿にまつわる怖い話がたくさんあります。
長い年月を生き続けた椿には精霊が宿って妖怪となり、時折美女に姿を変えて、しばしば人々をたぶらかし、時には命も奪ったというのです。
通りかかった男に近づくと、息を吹きかけ、相手を蜂の姿に変えてしまい、椿の花の中に誘い込んで生気を吸い取り命を奪ってしまったという、山形県に伝わる「椿女」の話。
古墳を発掘し鏡や骨を掘り返してしまったら、発掘に関わった者が祟りで死んでしまったので、祟りを鎮めるために椿の木を植えたところ、夜な夜な椿は美女に化け、光る姿で古墳の傍らに立っているという、岐阜県に伝わる「化け椿」の話。
お寺の境内に生えている樹齢700年の椿が、寺に凶事が起こる前には泣いたという、秋田県の蚶満寺(かんまんじ)に伝わる「夜泣き椿」の話。
椿にまつわる、ちょっと怖い伝承や昔話は、他にもいろいろあります。
日本での椿の花言葉は、「控えめな優しさ」「誇り」などのキレイなものですが、その裏では、怪異のような怖い存在の象徴のようにも扱われてきたんですね。
かわいい猫が、ときには化け猫のような妖怪としても描かれたように、椿の美しさの奥に感じる妖しさのようなものが、こうした怪談を生み出したのかもしれません。
また、日本では古くから、年月を経た樹木には魂が宿り、様々な現象を起こすと信じられてきたことも関係しているでしょう。
多くの木々の中で、美しい花を咲かせ、古代から人々に愛されてきた椿が、特別そうした畏怖の対象にもなったことは、理解できるような気がします。
まとめ
椿の花言葉は、「控えめな優しさ」「誇り」。
花の色別にも、それぞれ異なる花言葉がありますが、どの花言葉も、美しさの中に慎ましさや気品を感じる、椿にピッタリのものです。
「罪を犯す女」というちょっと怖い裏の花言葉も、「椿姫」が元になったその由来を知ると、椿への興味と愛着がより一層増したのではないでしょうか。
そんな花言葉を知った上で、椿の花を見て歩くのも楽しそうです。