普段はあまり聞く機会のない言葉を俳句などの中に見つけて、風情を感じることがあります。
そういったこととは無縁の私でさえ、感性の優れた人が詠んだ詩に触れると四季の移ろいの美しさに感動したりすることも、たまーにあったりするんですね。
そんな風情を感じさせる言葉の一つに『菜種梅雨』というものがあります。
菜種梅雨の意味とは
梅雨というと、6月から7月にかけて降るジトジトと鬱陶しい長雨ですけど、菜種梅雨とは一体どういう雨なんでしょうか。
普段は聞き慣れない言葉ですが、菜種という言葉がついただけで、なんだか綺麗な景色が浮かんでくるじゃありませんか。
菜種梅雨というのは、文字通り、菜の花が咲く季節に降る雨のことをいいます。
ですから梅雨とは言っても、時期としては、3月の下旬から4月の上旬にかけてなんですね。
その時期の雨ですから、梅雨のように何日も続くような長雨ではありませんが、曇や雨の日が続くすっきりしない天気の事を言います。
一般的にはその時期の雨は『春雨』って言いますけど、菜種梅雨のほうが綺麗な感じがしますね。
他にも、同じ意味の『催花雨(さいかう)』なんて言葉もあります。
春というと花が咲く季節。花を咲かせる雨という意味なんですね。こちらも風情があります。
菜種梅雨はどんな季節の季語?
この菜種梅雨という言葉、俳句において季語として使われてもいます。
と言いますか、俳句においてこそ相応しい、風情のある言葉ですよね。
3月の下旬から4月の上旬の、菜の花が咲く頃の雨を指す言葉ですから、当然、春の季語ということになります。
春の季語で雨を表す言葉というと、他にもこんなものがあります。
春雨、春霖、梅若の涙雨、春時雨
ちなみに、春以外の季語にも、雨を表す言葉はたくさんあります。
・夏
梅雨、筍梅雨、走り梅雨、青梅雨、送り梅雨、戻り梅雨、虎が梅雨、五月雨、夕立、梅霖、喜雨、白雨、卯の花腐し、ながし
・秋
秋雨、秋時雨、秋霖、御山洗、洗車雨
・冬
寒の雨、横時雨、月時雨、村時雨、朝時雨、夕時雨、小夜時雨
普段は雨について、梅雨、夕立、小雨、土砂降り、にわか雨…などと、大雑把な呼び分けしかしていませんが、季節を感じさせる風情のある呼び方がたくさんあるんですね。
菜種梅雨という言葉を使った俳句
菜種梅雨という言葉を使った俳句にはどんなものがあるのでしょうか。
菜種梅雨 念仏の膝 つめあわせ 林 信子
菜種梅雨 負け犬去りて われ佇ちぬ 岸田稚魚
唄はねば 夜なべ さびしや 菜種梅雨 森川暁水
引用元:
http://haikusenryu.yomibitoshirazu.com/yume_haiku_tabi/yume_haiku_tabi_haru_18_natanetuyu.htm
春の陽気な気分に水を指すような、ちょっと鬱陶しいけど暖かい雨の中の悲喜こもごもを思い浮かべると、なんとも言えない味わいがあります。
まとめ
同じ雨でも、季節によって幾つもの呼び分け方があるのですね。
こうした繊細な言葉に触れるたび、美しい四季のある国に住んでいることを幸いに思います。