海藻のわかめを食べてもきちんと消化されずに、ほぼそのままの形で排泄されてしまうことって、体調や体質のせいなのでしょうか?
それとも、わかめというのは、元々消化の悪い食べ物なのでしょうか?
ここでは、わかめなどの海藻が消化できない理由と、わかめに含まれる栄養や成分の効能効果についてまとめています。
実は、わかめの消化には、世界的にも珍しい、ある意外な体質も関係しているんですよ!
わかめを消化できないのってどこかおかしいの?
食べたわかめが、ほぼそのままの形を保ったまま排泄されてしまっていると、胃腸が弱いのかな? それとも、自分はわかめなどの海藻を消化できない体質なのかな? と、ちょっと気になってしまいますよね。
実は、わかめ、昆布、ひじき、海苔などの海藻を消化するためには、ある特殊な腸内細菌が必要で、単に胃腸が弱いとか、体調がよくないという問題ではないという場合もあるんです。
わかめの消化にはある酵素が必要!
わかめだけではなく、昆布、ヒジキ、そして海苔の原料になるアサクサノリ、スサビノリなどの海藻(藻類)は、固い細胞壁からできています。
なので、胃腸の消化液では消化できません。
では、わかめなどの海藻はどのように消化されるのかというと、そこに特殊な腸内細菌が関わってくるんです。
海藻を消化できる特別な酵素を作る腸内細菌というものがあって、それによって、固い細胞壁を持つわかめなども消化することができるというわけなんですね。
わかめや海苔の消化は日本人にしかできない!?
その特殊な腸内細菌というのは、誰もが持っているというわけではなく、なんと、日本人など一部の地域の人々の腸にしかいないんですよ。
それについては、フランスの研究チームが、2010年にイギリスの科学誌ネイチャーに発表した論文で述べられています。
ですので、わかめを消化できないという人は、その特別な腸内細菌が腸にいない可能性もあります。
日本ではその情報が大げさに広まって、「日本人しか海藻を消化できない」という、ちょっとデマに近い噂も拡散したようですが、そうとは限りませんし、日本人なら誰もがその腸内細菌を持っているというわけでもありません。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
わかめは元々消化が悪い食材です!
わかめ、昆布、海苔など海藻の消化には特殊な腸内細菌が必要というのは、それらが生の場合です。
実は、海藻の固い細胞壁は加熱することで壊すことができるので、仮にその腸内細菌がいなくても、熱を通したワカメ、昆布、ヒジキ、焼き海苔などでしたら消化は可能なんです。
ですので、熱を加えたワカメなどでも消化不良を起こしてしまうのでしたら、それは特殊な腸内細菌がいないことが原因ではないのかもしれませんね。
元々わかめというのは消化の良いものではありません。
わかめなどの海藻は、食物繊維が多くて消化の悪い食材ですから、特殊な腸内細菌の有無に関係なく、食べすぎた場合などには、原型をとどめたまま排泄されてしまうことも多々あります。
なので、わかめなどを食べた時に未消化で排泄されてしまったとしても、必ずしも胃腸が弱いというわけではありません。
わかめ、昆布、ヒジキ、海苔などの海藻のほか、ニラ、えのき、トマトの皮、もやし、ゴマなども繊維質が多いため、同様に消化吸収されにくい食材です。
食物繊維の効果効能とは? 消化が悪くても食べたほうがいいの?
生の海藻を消化できる特殊な腸内細菌の有無に関係なく、わかめなどの食物繊維の多い食材は、生でも加熱しても消化が悪いですけど、それでも食べたほうがいいのでしょうか?
わかめなどの海藻類に含まれる食物繊維は「水溶性食物繊維」と呼ばれ、腸の中でビフィズス菌などの栄養になることで、そうした善玉菌を増やし、腸内環境を整える効果があります。
水溶性食物繊維は、海藻類ですと、ワカメのほか、昆布、ひじき、もずく、寒天、めかぶなどに多く含まれます。
また、水溶性食物繊維には、次のような効果効能もあります。
便秘の改善
食物繊維というと、この効果が有名でしょう。
水溶性食物繊維はネバネバしているため、腸の中の便が移動しやすくなり、便秘解消の効果が期待できるんです。
また、水溶性食物繊維は水分を多く含むため、便を柔らかくして便通を良くするという効果も、便秘の予防や改善には有効です。
便秘は大腸がんの原因にもなりえますから、たかが便秘と思ってはいけません。
食欲を抑える
この効能は、ダイエットをしている女性には嬉しいのではないでしょうか。
わかめなどに多く含まれる水溶性食物繊維は、ネバネバして粘着性が高いため、腸の内部をゆっくり移動します。
そのため、お腹が空きにくくなって、つい食べすぎてしまうことを予防する効果も期待できるんですね。
コレステロールを排泄する
コレステロールが上昇すると、高血圧、動脈硬化、がんなどのリスクが高まってしまいます。
わかめなどの水溶性食物繊維は、そのコレステロールを吸着し、体の外に排泄してくれるのです。
コレステロールの排泄は、ダイエットにも効果的ですよ。
血糖値の上昇を抑える
水溶性食物繊維には、糖質も吸収して、高血糖を予防する効果もあるんです。
食物繊維は、ほとんど消化吸収されず、体を作る成分になったり、体を動かすエネルギー源になったりはしません。
ですが、以上に挙げた効果効能がありますので、食物繊維も適度に摂取したい成分の一つとなっています。
ですから、消化されずに、そのままの形で排泄されてしまっているとしても、わかめというのは、食べ方や調理の仕方に注意して日々の食事に取り入れたい食材です。
(※胃腸の弱い人は、わかめなどの消化の悪いものは積極的に食べないほうがよいでしょう)
わかめを食べるときの注意点
・わかめなどに多く含まれる水溶性食物繊維は、過剰に摂取すると下痢を引き起こす場合があります。
また、サプリメントなどで水溶性食物繊維を多く摂りすぎると、ビタミンやミネラルの吸収が阻害され、体に必要な栄養成分まで体外に排泄されてしまいます。
便秘の改善などに効果効能があるからといって、過剰摂取をしてしまうと、かえって体によくありませんから注意しましょう。
・食物繊維は、生よりも加熱したほうが、柔らかくなり食べやすくなります。
特に、わかめなどの海藻は、生の場合、消化には特殊な腸内細菌が必要ですが、日本人なら、その腸内細菌を全ての人が持っているというわけではありません。
わかめなどの海藻を生で食べると決まって消化不良を起こすという人は、加熱して食べてみて下さい。
・わかめなどの海藻は元々消化の悪い物ですから、体調の悪い時は食べるのを控えたほうがよいでしょう。
わかめに含まれる栄養にはこんな効果がある!
わかめには食物繊維が豊富なだけではなく、次に紹介する栄養素が特に多く含まれます。
カリウム
カットわかめ100g中ですと、約440mgほどのカリウムが含まれていて、ワカメが含む栄養の中ではダントツの含有量を誇ります。
カリウムはナトリウムの排泄を促しますから、塩分のとり過ぎによる高血圧の予防に効果はもちろん、むくみの解消にも効果が期待できますよ。
フコイダン
フコダインフコイダンとは、海藻特有の、あのヌルヌルの成分です。
わかめはもちろん、昆布やもずくなどにも多く含まれています。
フコイダンという成分にはどんな効果があるのかといいますと、NK細胞を活性化させることで体の免疫力をアップし、がんを予防する働きが期待できるんです。
(※NK細胞=ナチュラルキラー細胞とは、体の中のウイルスやがん細胞を見つけ次第攻撃してくれるリンパ球の一種です)
また、胃の粘膜にピロリ菌がつくことを防止し、胃炎、十二指腸潰瘍、胃がんなどを予防してくれる効果もあります。
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赤血球や白血球など、擬人化された体内細胞が活躍する人気コミック「はたらく細胞」。5巻にはNK細胞も登場(表紙の人)。
慶応大の医学部でも使用されているだけあって、免疫システムなどについて楽しく学べます。
ヨウ素
ヨウ素には、交感神経を刺激し、体の代謝を促す効果があります。
太りにくい体を作るのに役立つだけではなく、髪や肌を美しく保つ効果も期待できる栄養素です。
海藻の中では、昆布に特に多く含まれる栄養素なのですが、わかめの含有量もそれなりにあります。
ちなみに、ワカメが含む他の主な栄養素は、次のようになっています。
(カットわかめ100gあたり)
カロリー | 138kcal |
タンパク質 | 18.0g |
炭水化物 | 41.8g |
脂質 | 4.0g |
食物繊維 | 35.6g |
カリウム | 440mg |
カルシウム | 820mg |
ナトリウム | 9500mg |
マグネシウム | 410mg |
リン | 290mg |
亜鉛 | 2.8mg |
鉄分 | 6.1mg |
銅 | 0.16mg |
ヨウ素 | 8500μg |
セレン | 8μg |
クロム | 10μg |
モリブデン | 10μg |
ビタミンA | 1800μg(βカロテン当量) |
ビタミンK | 1600μg |
葉酸 | 18μg |
ナイアシン | 0.3μg |
ビオチン | 28.0μg |
まとめ
わかめなどの海藻は固い細胞壁でできているため、生で食べる場合、特殊な腸内細菌がいないと消化できません。
しかし、加熱すれば細胞壁が壊れて、普通に消化できるようになりますよ。
生でわかめを食べると消化できない場合は、火を通したものを試してみて下さい。
生でも加熱しても、わかめは食物繊維が多いので、消化されにくい食材です。
消化不良で原型をとどめたまま排泄されてしまうことも多々ありますから、そのようなことがあっても、必ずしも胃腸が弱いとは限りません。
わかめに含まれる栄養や食物繊維には、多くの効果効能がありますから、食べ方や調理法に気をつけて日々の食事に取り入れましょう。
・加熱することで、わかめの食物繊維もやわらかくなり、消化されやすくなる。
・水溶性食物繊維を多く含むわかめは、食べ過ぎると下痢を起こすこともあるので、食べる量にも気をつける。
わかめを消化できない人が特に気をつけるべきなのは、この2点ですね。
胃腸の弱い人は、わかめなどの海藻は消化が悪いですから、積極的に食べないほうがいいでしょう。
海藻のヌルヌル成分の名称は、
「フコダイン」ではなく「フコイダン」ではないでしょうか。
http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/crt/fe/about.html
https://www.fucoidan-life.com/info_fucoidan/about_fucoidan/
返信が遅くなり大変失礼いたしました。ご指摘ありがとうございます。確かにご指摘の通りでした。記事修正いたしました。